発端は、7月30日に配信された共同通信のこの記事でした。
憲法改正でナチス引き合い / 麻生副総理、都内の講演で

 麻生太郎副総理兼財務相は29日夜、都内で講演し、憲法改正をめぐり戦前ドイツのナチス政権時代に言及する中で 「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。 誰も気がつかない間に変わった。 あの手口を学んだらどうか」 と述べた。

 「けん騒の中で決めないでほしい」 とし、憲法改正は静かな環境の中で議論すべきだと強調する文脈の中で発言したが、ナチス政権を引き合いに出す表現は議論を呼ぶ可能性もある。

 麻生氏は 「護憲と叫んで平和がくると思ったら大間違いだ。 改憲の目的は国家の安定と安寧。改憲は単なる手段だ」 と強調した。 その上で 「騒々しい中で決めてほしくない。 落ち着いて、われわれを取り巻く環境は何なのか、状況をよく見た世論の上に憲法改正は成し遂げられるべきだ。 そうしないと間違ったものになりかねない」 と指摘した。

 安倍晋三首相や閣僚による終戦記念日の靖国神社参拝を念頭に 「国のために命を投げ出してくれた人に敬意と感謝の念を払わない方がおかしい」 とし 「静かにお参りすればいい。 何も戦争に負けた日だけに行くことはない」 と話した。
( 共同通信 )
 「麻生副総理が7月29日の講演の中で、憲法改正をめぐりナチスを引き合いに出した。 これは議論を呼ぶ可能性がありますよ」 という、いわゆる “ご注進” 報道です。

 すると、思惑どおり、海外メディアからさっそく麻生さんへの批判が。
 共同通信の報道の翌日には、朝日新聞はじめとする日本の他のメディアも便乗報道。
 そして、8月1日午前、麻生副総理は発言を撤回。
麻生太郎副総理兼財務相が発表したナチス発言撤回に関するコメントの全文は次の通り。

 7月29日の国家基本問題研究所月例研究会における私のナチス政権に関する発言が、私の真意と異なり誤解を招いたことは遺憾である。
 私は、憲法改正については、落ち着いて議論することが極めて重要であると考えている。 この点を強調する趣旨で、同研究会においては、喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげたところである。 私がナチス及びワイマール憲法に係る経緯について、極めて否定的にとらえていることは、私の発言全体から明らかである。 ただし、この例示が、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい。( 原文通り )
 こういう経緯です。

 8月1日午後のニッポン放送 「ザ・ボイス そこまで言うか!」 でも、このニュースが取り上げられました。
 青山繁晴さんと飯田浩司さん( ニッポン放送アナウンサー )のやりとりを起こします。

 この書き起こしではあまり伝わってこないでしょうが、青山さん、全体通してものすごく怒ってます。

 内容紹介ここから
飯田浩司:今日のニュース7項目をピックアップして、青山さんと解説していきます。 まず1つめ、こちらです。 『麻生副総理、憲法改正めぐる発言を撤回』。 麻生副総理は憲法改正をめぐって、ナチス政権を引き合いに発言したことについて、誤解を招いたと撤回しました。 で、この、そもそもの発言についてなんですけれども、メディアの切り取り方でかなり印象が変わってくると、いうこともありますんで、まず全文を、ちょっと長いんですが ……
青山繁晴:ちょっと待って
飯田浩司:あ、はい
青山繁晴:メディアの切り取り方によって、印象が変わる、どころじゃない!
飯田浩司:はい
青山繁晴:全く麻生さんの言ってる事と逆さまにして、報じてるってことなので、全文を、飯田浩( こう )ちゃんに読んでいただきます
飯田浩司:はい。 え~、では、全文紹介いたします。
『 護憲と叫んでいれば平和が来ると思っているのは大間違いだし、改憲できても、世の中すべて円満にと、全然違う。改憲は、単なる手段だ。 目的は国家の安全と、安寧と、国土、我々の生命、財産の保全、国家の誇り。 狂騒、狂乱の中で、決めてほしくない。 落ち着いて、我々を取り巻く環境は何なのか、この状況をよく見て下さい、という世論の上に、憲法改正は成し遂げるべきだ。 そうしないと、間違ったものになりかねない。 ヒトラーは民主主義によって、議会で多数を握って出てきた。 いかにも軍事力で政権を取ったように思われる。 全然違う。 ヒトラーは、選挙で選ばれた。 ドイツ国民は、ヒトラーを選んだ。 ワイマール憲法という、当時、欧州でもっとも進んだ憲法下に、ヒトラーが出てきた。 常に、憲法はよくても、そういうことはありうる。 今回の憲法の話も、狂騒の中でやってほしくない。 靖国神社も静かに参拝すべきだ。 お国のために命を投げ出してくれた人に、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい。 いつからか、騒ぎになった。 騒がれたら、中国も騒がざるをえない。 韓国も騒ぎますよ。 だから、静かにやろうやと。 憲法はある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。 誰も気づかないで変わった。 あの手口に学んだらどうかね。 わーわー騒がないで。 本当にみんな、いい憲法と、みんな納得して、あの憲法変わっているからね。 僕は民主主義を否定するつもりはまったくありませんが、私どもは重ねて言いますが、喧噪(けんそう)の中で決めてほしくない 』
…… と。 え~、これが、麻生さんの発言の全文であります。
青山繁晴:これまったく、何の問題もないじゃないですか
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:で、その、たとえば朝日新聞や共同通信が、僕の古巣の共同通信も、っていうか共同通信が一番最初に、間違って報じてるんですけど。 共同通信、聞いてますか?
飯田浩司:月曜日のこの発言があって、翌日報じたの実は共同だけで、朝日新聞は一切報じてなかったんです
青山繁晴:はい。 朝日新聞は騒ぎになってから、便乗してきたんですけれども、その話はあとでもう一度言いますが、その麻生さんの発言の中で、あの手口に学んだらどうかねっていうのは、え~、ワイマール憲法を、民主主義を使って、ナチの憲法に変えた、あの手口、そういうことが起きてしまうんだってことを反面教師にして、そういうことが起きないように、憲法改正も、きちんと、静かな環境で、国民が考えつつやりましょうと発言されてるんであって、その、朝日新聞や共同通信が、これ誤解して報じてんじゃなくて、意図的としか考えようがありません、僕の古巣の共同通信も含めて。 その報道ぶりだと、ナチスが、軍事力を使ったり目立つことをしないで、民主主義、を上手く使って、いつの間にか、ワイマール憲法っていう、当時民主主義の典型と言われた、最先端と言われた憲法を、独裁憲法に変えたように、安倍政権も、その、憲法を、そうやって上手く変えるんだと、発言したんだっていうように、報じてるわけですよ
飯田浩司:はい
青山繁晴:これ、朝日新聞や共同通信に良心ある記者がいたら、ストライキすべきじゃないですか
飯田浩司:う~ん …… ( 笑 )
青山繁晴:これね、あの、でもね、リスナーの方々、国民の方々、もう本当に一緒に考えましょう。 あの、存在もしなかった 『従軍慰安婦』 なるものが、あったかのように言われてね、その、まったく存在も何もしなかった、その少女の像なるものが、アメリカにつくられるってことが、いま起きてますね。 このあとニュースにまた出てきますが。 その発端と同じですよ、これ根っこは
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:ね。 で、いま、あの、この番組始まる前に飯田浩ちゃんと、僕と、あるいはスタッフの方々で一緒に、今回の報道の経緯を調べたんですけれども、最初は、飯田浩ちゃんがさっき、あの、言ったようにですね、共同通信が、ま、ごく短い記事ですけど短い記事だからいいってんじゃなくて、その短い記事だから、その、ナチの手口に学んでこれから憲法改正やりたいと、麻生さんが発言したかのような、ことを言って、言ってって、その、報じて、それを日経新聞だけが使った
飯田浩司:はい
青山繁晴:そしてそのあと、その、共同通信の、報道というのは、普通の国民が思ってらっしゃるよりも世界に出て行きますから。 こういうのを、representative news agencyというんですが、その国を代表した通信社がどこの国にもあって、それは基本的に対外発信になるんですよ。 従って、日本のナンバー2の副総理、しかも元総理大臣の麻生さんていう人が、その、今後、日本政府は、ナチがやったのを真似て、憲法改正するんだ、みたいな印象を、その短い記事だからよけい海外受け取って、たとえばユダヤ系の団体が、その、批判したり、それから中国なんかも便乗して、え~、批判したりってことをやって、騒ぎになったら、突如として朝日新聞が、その、それを、あの、使ってですね、報じて、しかもですね、その記事の本体は、その、まさしく、デタラメに報道されたことを正しいとして、ナチの手口を真似して、これから麻生さんも、日本政府もやるんだみたいなことを報じておきながら、全文は以下の通りっていうのをちゃんと出してるわけです
飯田浩司:ふふ、うん( 笑 )
青山繁晴:だから、ずるいったらありゃしないってことはこのことでね。 言い訳だけしといてですよ、その、普通みんな忙しいから、やっぱり、見出しをまず読みます。 そして見出しに引きずられます。 その、全文ていうやつ、長ければ長いほど、それを最初から最後まで読むのは、僕らみたいな仕事の人が中心であって、普通はみんな、全文はあくまで参考に置いてあるんであって、その中身をちゃんと、その、柱はこういうことですと報じてくれてると未だにみんなが信じてるから、その信頼を逆手に取ってですよ、悪用して、その、麻生さんの発言をねじ曲げてるとか印象を変えてるとかレベルじゃなくて、まったく、180度逆さまに報じてるわけですよ
飯田浩司:はい
青山繁晴:その180度逆さまっていうのはですね、皆さんこの、 『ザ・ボイス』 すごいと思うのは、ちゃんと、リスナーがメールで指摘してらっしゃって、ちょっと、飯田浩ちゃん、読んで下さい
飯田浩司:はい。 え~、滋賀県大津市からスドウさん、33歳男性の方。え~、 『メディアでの論調と180度異なっている発言を麻生さんが、されていたことに、驚かされました。 言葉を切り取ってあたかも失言したかのように報道する姿勢に閉口してしまいます 』
青山繁晴:ね。 閉口してしまうっていうように、ま、穏やかにお書きになってるんだけれども、これは本当に深刻な問題ですよ
飯田浩司:これ、ほんとにたくさんのですね、メールもツイッターもいただいてるんですが。 これは、国益に反するどころの話じゃないですよね
青山繁晴:はい。 それから、報道の倫理に反します
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:だから僕はいま、あの、記者の、現役の記者の諸君はストライキを起こすべきだって言ったんですよ。 志を持って記者になったんでしょう? 立場がどうであれ、誤報だけは絶対しちゃダメなんですよ。 誤解を与えるとか、その、解釈の問題じゃなくて、これ、まったくの、デタラメ報道じゃないですか
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:だから、これはもう一度言いますが、その、この番組聴いてらっしゃるリスナー、国民の方の怒りの声をちゃんと挙げると、いうだけじゃなくて、これ、あの、Podcastでも聴けるんですから、その、現役の記者の人でこれ聴いてる人は必ずいますよ
飯田浩司:う~ん。 いると信じたいですね
青山繁晴:だから、あの、記者出身者としてもう一度言いますが、記者諸君、その、内部から声挙げないと、こんなことをしてては、もう、終わりですよ、日本の報道は
飯田浩司:これ、あの、報道の取材の仕方としてね青山さん、こういう発言、を、会合で麻生さんがしてるっていうのを、記者の人たちはみんな、あの、それこそICレコーダーとかで録って、で、それを一言一句、書き起こすわけじゃないですか。 で、それが、会社に送られますよね、そのまんま。だから、そのあと、会社の中できっとこれは手が入ってこういう物になってしまうわけですよね?
青山繁晴:会社の中で手が入ってるんじゃなくて、普通は ……
飯田浩司:システムの問題なんですか、これは
青山繁晴:う~んと、システムの問題ってのはそのチェック機能が正しく働いてないって意味では、あの、システムの問題なんですが、まず、その、記者の問題ですよ
飯田浩司:現場の
青山繁晴:現場の記者の問題です、まずは
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:何よりも、現場で書いた、現場に出て行った記者が書いた記事がやっぱり最優先で、そしてそれに手が入って、たとえば、本人が書いた記事の内容と、全然違うことになってたら、そこで、あの、デスクが直したんだからっていって、ああそうですかって記者も、いないわけじゃないけれども、しかし僕の知る限りですね、むしろ大半の記者は、デスクが変な直し方をしたら、それ違いますと、麻生さんの発言の趣旨はこうですと。 それはね、大した記者じゃなくても言いますよ、その程度のことは
飯田浩司:う~ん。 事実は事実として厳然とあるわけですからね
青山繁晴:そうです。 はい
飯田浩司:それは
青山繁晴:だから、まずはその、出先の記者の問題で、そしてデスクとかが、あの、これはこういう風に書いた方が面白いんじゃないのとか、したならば、それはですね、あの、もう、その場で辞表たたきつけるようなことしなきゃダメですよ、こんな国益に関わることは
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:だから、これは、その共同通信はですね、あの、記事審査室あるんです、共同通信にも。 当たり前ですよ、どこの、あの、メディアにもあります、大手メディアだったら全部。共同通信内部の、記事審査室で、一体この、捏造記事はどうやって作られたのかを、内部浄化の努力として、やんなきゃいけないですよ
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:はい。 そして、麻生さん、これ撤回なさることは何もありませんよ、こんなの。 撤回したらよけい誤解が広がりますよ、これ
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:ええ。 撤回なんかダメですよ、これは。撤回しちゃダメです、これは。はい。 ( 報道が )間違ってることは間違ってると言わなきゃ
飯田浩司:これ、麻生さんの、その撤回の理由について、え~、今日、会見というか、まああの、記者が囲んで、麻生さんの声明を聞くというのがありまして。 え~、『 喧噪に紛れて十分な国民的理解や議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に関わる経緯をあげた。ナチスやワイマール憲法の経緯を極めて否定的にとらえていることは、発言全体からでは明らか。 だが、誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示してあげたことは撤回したい』 と、述べております
青山繁晴:いや、これね、あの、麻生さんの言葉ですけどね、ナチスを例に挙げちゃいけないっていうのはね、それ自体が無茶苦茶な話でしょう?
飯田浩司:うん。 そうなってしまうと ……
青山繁晴:ナチスが、あの、同じ戦争を戦った、当時は、いわば、あの、僕は当時生きてたら反対したと思うけど、同盟国だった、ドイツだけど、ナチスが間違ってたことは、あの、それは確かなんですよ。 だからこそ歴史に学ばなきゃいけないんでしょう?
飯田浩司:はい
青山繁晴:だから、ナチスっていうものを政治家が引き合いに出しちゃいけないんだったら、歴史の、重大な教訓をね、政治が捨て去るってことでしょう? そんなのが一番ダメですよ。 じゃあ何のためにみんな死んだんですか
飯田浩司:これは結局、あの、それが元になって言葉狩りとかそういうことになってしまっては一番いけないですよね
青山繁晴:そうです。 それでね、これ麻生さんがおっしゃってる、この、ワイマール憲法が、むしろナチを生んだんだっていうのは、歴史学で、一番普通の、ごく当たり前の認識で、何もその、麻生さんが変わったことを言ったって部分は、ないんですよ。 いま、飯田浩ちゃんが読んでくれた全文の ……
飯田浩司:全文を読めば
青山繁晴:…… 中のどこにも。 え~、歴史学にもいろんな立場があります。 しかし、ワイマール憲法の弱点をむしろ突いて、ナチが軍事力を使わずに権力を取ったっていうのは、歴史学の、立場を超えた常識なんですよ。 それをおっしゃってるだけなんで。 ナチスを引いたから、それは誤解を招いたんで発言撤回、そんなの絶対ダメですよ。 歴史に学ぶことができないじゃないですか。 歴史に学ばない政治やれって言うんですか
飯田浩司:う~ん
青山繁晴:はい
 
( 2013.08.05:櫻井よしこ氏 )


 

 なるほど、朝日新聞はこのようにして事柄を歪曲わいきょくしていくのか。 麻生太郎副総理発言を朝日新聞が報じる手口を眼前にしての、これが私自身の率直な感想である。

 8月1日と2日、朝日の紙面は麻生発言で 「熱狂」 した。 日によって1面の 「天声人語」、社会面、社説を動員し、まさに全社あげてといってよい形で発言を批判した。

 討論会の主催者兼司会者として現場に居合わせた私の実感からすれば、後述するように朝日の報道は麻生発言の意味を物の見事に反転させたと言わざるを得ない。

 7月29日、私が理事長を務める国家基本問題研究所( 国基研 )は 「日本再建への道」 と題した月例研究会を主催した。 衆議院、都議会、参議院の三大選挙で圧勝、完勝した安倍自民党は、如何いかにして日本周辺で急速に高まる危機を乗り越え、日本再建を成し得るかを問う討論会だった。

 日本再建は憲法改正なしにはあり得ない。 従って主題は当然、憲法改正だった。

 月例研究会に麻生副総理の出席を得たことで改正に向けた活発な議論を期待したのは、大勝した自民党は党是である憲法改正を着実に進めるだろうと考えたからだ。

 が、蓋を開けてみれば氏と私及び国基研の間には少なからぬ考え方の開きがあると感じた。 憲法改正を主張してきた私たちに、氏は 「自分は左翼」 と語り、セミナー開始前から微妙な牽制けんせい球を投げた。

 セミナーでも氏は 「最近は左翼じゃないかと言われる」 と述べ、改正論議の熱狂を戒めた。 私はそれを、改正を急ぐべしという国基研と自分は同じではないという氏のメッセージだと、受けとめた。

 「憲法改正なんていう話は熱狂の中に決めてもらっては困ります。 ワァワァ騒いでその中で決まったなんていう話は最も危ない」 「しつこいようだが( 憲法改正を )ウワァーとなった中で、狂騒の中で、狂乱の中で、騒々しい中で決めてほしくない」 という具合に、氏は同趣旨の主張を5度、繰り返した。

 事実を見れば熱狂しているのは護憲派である。 改憲派は自民党を筆頭に熱狂どころか、冷めている。 むしろ長年冷めすぎてきたのが自民党だ。 いまこそ、自民党は燃えなければならないのだ。

 にもかかわらず麻生氏はなお、熱狂を戒めた。 その中でヒトラーとワイマール憲法に関し、 「あの手口、学んだらどうかね」 という不適切な表現を口にした。 「ワイマール憲法がナチス憲法に変わった」 と氏はいうが、その事実はない。 有り体に言って一連の発言は、結局、 「ワイマール体制の崩壊に至った過程からその失敗を学べ」 という反語的意味だと私は受けとめた。

 憲法改正に後ろ向きの印象を与えた麻生発言だったが、朝日新聞はまったく別の意味を持つものとして報じた。

          ◇◇◇◇◇

 たとえば1日の 「天声人語」 子は、麻生発言を 「素直に聞けば、粛々と民主主義を破壊したナチスのやり方を見習え、ということになってしまう」 と書いた。 前後の発言を合わせて全体を 「素直に聞」 けば、麻生氏が 「粛々と民主主義を破壊」 する手法に習おうとしているなどの解釈が如何にして可能なのか、不思議である。 天声人語子の想像力のたくましさに私は舌を巻く。

 朝日の記事の水準の高さには定評があったはずだ。 現場にいた記者が麻生発言の真意を読みとれないはずはないと思っていた私は、朝日を買いかぶっていた。

 朝日は前後の発言を省き、全体の文意に目をつぶり、失言部分だけを取り出して、麻生氏だけでなく日本を国際社会の笑い物にしようとした。 そこには公器の意識はないのであろう。 朝日は新たな歴史問題を作り上げ、憲法改正の動きにも水を差し続けるだろう。 そんな疑惑を抱くのは、同紙が他にも事実歪曲わいきょく報道の事例を指摘されているからだ。

 典型は 「読売新聞」 が今年5月14、15日付で朝日の誤報が慰安婦問題を政治問題化させたと報じた件だ。 読売の朝日批判としては珍しいが、同件について朝日は説明していない。

 古い話だが、歴史問題にこだわるなら、昭和20年8月の朝日の報道も検証が必要だ。 終戦5日前に日本の敗戦を示唆する政府声明が発表され、朝日新聞の編集局長らは当時こうした情報をつかんでいた。 新聞の使命としていち早く、日本敗戦の可能性を国民に知らせなければならない。 だが、朝日新聞は反対に8月14日、戦争遂行と戦意高揚を強調する社説を掲げた。 これこそ、国民への犯罪的報道 ではないか。 朝日の歴史認識を問うべきこの事例は 朝日新聞の戦争責任 ( 安田将三、石橋孝太郎著、太田出版 )に詳しく、一読を勧めたい。

 これらのことをもって反省なき朝日と言われても弁明は難しい。 その朝日が再び麻生発言で歴史問題を作り出し、国益を害するのは、到底許されない。

 それはともかく、自民党はまたもや朝日、中国、韓国などの批判の前で立ちすくむのか。 中国の脅威、韓国、北朝鮮の反日、米国の内向き志向という周辺情勢を見れば、現行憲法改正の急務は自明の理だ。 それなのに 「冷静な議論」 を強調するのは、麻生氏を含む多くの自民党議員は憲法改正に消極的ということか。 日本が直面する危機に目をつぶり、結党の志を横にき、憲法改正の歩みを緩めるのだろうか。 であれば、護憲の道を歩む朝日の思うつぼではないか。 自民党はそれでよいのか。 私の関心は、専ら、この点にある。





( 2014.03.03 )


 2月21日、 「朝日新聞」 が掲載した 「米国から見る安倍政権1年」 という大型インタビュー記事には思わず苦笑した。 在米の作家、冷泉彰彦氏が安倍晋三首相の政治外交に米国の懐疑と警戒が強まっているとして、こう指摘する。
 「ジョン・ダワー氏の言うように、日本は 『敗北を抱きしめて』 まともな国になったはず」 なのに、安倍首相は 「米国が主導して作り上げた戦後の国際秩序」 を乱している。 ダワー氏の偏見と事実誤認に満ちた書を後生大事にするこうした記事をはじめ、 社説、 「天声人語」、 読者投稿などを駆使した朝日の紙面構成には疑問を抱かざるを得ない。 朝日は、メディアの役割として 「不偏不党」 「真実の公正敏速な報道」 をうたう。 にもかかわらずその 報道は往々にして事実に基づいていない むしろ真実をゆがめ 結果として中国や韓国の利益を代表するかのような報道があふれている

 中国では 「抗日戦争勝利記念日」 と 「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」 がおのおの9月3日と12月13日に定められ、習近平政権の歴史問題での対日強硬路線がより強化されつつある。 日本企業を相手どった訴訟は、中韓両国で連発されると考えられる。

 中国の得意とする3戦、世論戦、法律戦、心理戦の内、少なくとも前2者の戦いが日本相手に全面展開中である。

 こうしたときこそ、事実の確認が重要である。 だが、朝日の報道は無責任にも逆方向に向かっている。 3月1日の朝日朝刊4面の 「河野談話 先見えぬ検証」 の記事である。 菅義偉官房長官が河野官房長官談話の作成過程を検証する考えを表明したことを伝える同記事の隣に 「河野洋平氏・政権にクギ」 という囲み記事を朝日は並べた。

 河野氏が 「前のめりの方々、昔の人たちの経験談をよく聞き、間違いのない政治をやってほしいと」 と語ったことを紹介し、これを安倍政権へのクギと解説したのだ。 が、前のめりで慰安婦談話を出したのが河野氏であり、捏造ねつぞう記事でお先棒を担いだのが朝日だったのではないか。 この記事はそんな自分たちの過ちに口を拭うものだ。

 91年8月11日、 大阪朝日の社会面一面で、 植村隆氏が 「『女子挺身隊』 の名で戦場に連行され、 日本軍人相手に売春行為を強いられた 『朝鮮人従軍慰安婦』」 を報じた。

 この女性、金学順氏は後に東京地裁に訴えを起こし、 訴状で、14歳で継父に40円で売られ、 3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている。 植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じず 慰安婦とは無関係の 「女子挺身隊」 と慰安婦が同じであるかのように報じた それを朝日は訂正もせず、大々的に紙面化、社説でも取り上げた。 捏造を朝日は全社挙げて広げたのである。

       

  談話は元慰安婦16人に聞き取りを行った上で出されたが、その1人が金学順氏だ。 なぜ、継父に売られた彼女が日本政府や軍による慰安婦の強制連行の証人なのか。 そのことの検証もなしに誰よりも 「前のめり」 になったのが河野氏だ。

 日本国内における談話作成のプロセスの検証を、朴槿恵大統領は 「3・1独立運動」 の記念式典で強く牽制けんせいした。 朝日は3月2日、早速、 「河野談話再検証の動きなどがこのまま続けば、関係改善の糸口を見つけるのはさらに困難」 になると報じた。 同じ4面に前田直人編集委員が集団的自衛権に関して 「安倍さん、イケイケドンドンですか」 「民主主義は手続きが大事だ」 と強調するコラムを書いた。

  手続きは大事なのだ。

 村山富市氏は首相就任当初から、日本国政府の歴史に関する謝罪決議採択を目指した。 反対論が強く、決議案否決の読みが確定したとき、村山氏らは驚く一手を使った。 西村眞悟衆議院議員が05年7月号の 『諸君!』 に詳述したが、6月9日、金曜日夕刻、衆議院内に 「本日は本会議は開会されない、各議員は選挙区に戻られたし」 という通知が配られたそうだ。

 だまし討ちが計画されているとはつゆほども知らない、決議反対派の議員の多くが永田町を後にした午後7時53分、突然、土井たか子衆議院議長が本会議開催のベルを押した。 出席議員は230名、欠席議員は265名だった。

 官報によると、本会議は午後7時53分開会、7時59分散会となっている。 電光石火の6分間の勝負だった。

 これが選良たちの行動か。 とまれ、同決議をもとに、極秘に作業が進められ、約2ヵ月後の8月15日、村山談話は突然閣議決定された。

 世紀のたくらみのご当人はいま、河野談話策定過程の検証について 「事実がなかったとあげつらって何の意味があるのか」、村山談話は 「日本の国是」 と語る。

 こうした恥ずべき言動はほとんど検証せず、朝日は安倍政権たたきを続ける。 そこに、毎日新聞、東京中日、共同通信、米国のリベラル系人脈が加わり、中韓両国に吸い寄せられたような論調が築かれていくのはどうしたことか。

 メディアは何よりもいま、事実関係の特定に力を注ぐべきではないのか。 朝日の綱領は単なるスローガンか。 こうしたメディアの無責任を放置すれば、日本は中韓の仕掛ける世論戦、法律戦の戦いに敗れかねないだろう。





( 2014.03.07 )


 どうやら朝日新聞にとっては、慰安婦問題の真相は読者に知らせるべきでない 「特定秘密」 に当たるらしい。 6日付の同紙の週刊新潮、週刊文春の広告は、それぞれ次のような伏せ字が施されていた。




 「●●記事を書いた 『朝日新聞』 記者の韓国人義母 『詐欺裁判 』」 ( 新潮 )

 「『 慰安婦問題』 A級戦犯●●新聞を断罪する」 ( 文春 )

 もちろん、他紙の広告をみるとこの伏せ字部分は 「捏造ねつぞう」 「朝日」 とはっきり記されている。 朝日は、こんな子供だましの隠蔽いんぺいで一体何をごまかそうとしているのだろうか。

 朝日は昨年10月30日付の社説では特定秘密保護法によって秘密が増えるとの懸念を表明し、 「秘密保護法案 首相動静も■■■か?」 と伏せ字を用いたタイトルでこう説いていた。

 「政治家や官僚は、だれのために働いているのか。 原点から考え直してもらいたい」




 政府には秘密はいけないと説教する一方、自身に都合の悪いことは堂々と隠すというわけだ。 そんな朝日にこそ、誰のために記事を書いているのか、報道機関があるのか原点から考え直してもらいたい。

 新潮が 「捏造」 と指摘しているのは、慰安婦問題に火が付くきっかけとなった平成3年8月11日付の朝日の記事 「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」 のことである。 記事はこう書いている。

 「日中戦争や第二次大戦の際、 『女子挺身隊』 の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた 『朝鮮人従軍慰安婦』 のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり …」

 記事では実名は記されていなかったが、この女性は同年12月に日本政府を相手取り、慰安婦賠償請求訴訟を起こした金学順氏だ。

 だが、25歳未満の女性を勤労挺身隊として動員し、工場などで働かせた 「女子挺身勤労令」 と慰安婦はそもそも何の関係もない。

 また、金氏は訴状では、17歳だった昭和14年に 「金もうけができる」 と説得され、養父に連れられて中国へ渡り、そこで慰安婦にされたと記しているが、女子挺身勤労令の公布は19年8月 なのである。

 朝日の記事は、女子挺身隊と慰安婦を意図的に混同し、しかも養父にだまされたと証言している女性が日本軍に 「連行」 されたように書いたのだから、捏造といわれても仕方がない。




 金氏は別のインタビューでは 「40円でキーセン( 朝鮮半島の芸妓げいぎ、売春婦 )に売られた」 と明かしており、慰安婦募集の強制性を認めた河野談話の根拠となった聞き取り調査に応じた際には訴状とは異なるこんなストーリーを語っている。

  「17歳だった16年春ごろ、少女供出の噂が広まり、養父と満州方面に逃げた。 北京で将校風の軍人に連れていかれた」

 言うことがころころ変わっているが、河野談話は無批判・無条件にこうした証言を受け入れて成立した。 一方、朝日は平成4年1月12日付の社説 「歴史から目をそむけない」 でも、重ねてこう書いている。

  「『挺身隊』 の名で勧誘または強制連行され …」

 慰安婦問題でデマをしつこく報じ、反論や誤りを正す指摘から目をそむけて見ないようにしてきたのは、ほかならぬ朝日自身ではないか。