「朝日新聞は海外メディアに謝罪広告を出せ」 ── 2月18日、一連の慰安婦誤報について朝日新聞社を提訴した原告の一人は 「( 朝日の誤報がもとで )屈辱を受けているのは我々のような米国在住の日本人だ」 と訴える。
 朝日は昨夏、誤報を認め訂正・謝罪記事を掲載したが、1990年代以降、「慰安婦=性奴隷」として定着した国際世論の前では、ほとんど意味が無いという。



 「日本のクオリティ・ペーパーの朝日が慰安婦強制連行と書いているんだぞ。 君はそれを否定するのか」 ── 朝日新聞を提訴した原告の一人の馬場信浩氏( 73 )は、米国の地方市議からそう怒鳴られた。

 馬場氏は、テレビドラマ 『スクールーウォーズ』 の原作などを手がけた著名な作家で、89年に米国に移住。 現在、カリフォルニア州で暮らしている。 この数年、馬場氏は米国内で韓国系住民が中心となって各地で進めてきた 「慰安婦像・碑」 設置をめぐる同州各地の市議会公聴会で反対意見を何度も述べてきた。

 「13年7月に行われたブエナパーク市議会の公聴会で証言した時、閉会後、韓国系議員から怒鳴られました。 その前にも、13年3月のグレンデール市議会の公聴会で議長役を務めた議員から 『( 慰安婦強制連行は )日本政府も認めている。 今日やってきた日本人はみんな右翼か。 南京大虐殺を知っているか。 バターン死の行進を知っているか。 騒げば外へつまみ出すぞ』 と木槌を叩かれ、公衆の面前で面罵された。 昨年夏の朝日の訂正記事以降も、各市議会議員や地元メディアが慰安婦についての考えを改めるようなことはなく、訂正記事の英訳を持って説得しようとしても無視される始末です」 ( 馬場氏 )

 確かに朝日新聞は14年8月、1980年代から続いた同紙の慰安婦報道について、 “慰安婦狩り” をしたとする吉田清治証言を虚偽と認め記事を訂正・取り消すなどした。 が、それが米国内の慰安婦問題論争に影響を与えたかと言えば、答えはノーだと馬場氏は言う。 今や慰安婦問題は米国では朝日の誤報から離れて一人歩きしている。 主に日本国内の読者向けの朝日新聞 “32年目の訂正記事”はあまりに遅く、不十分だったのだ。

 朝日新聞社広報部に昨夏の訂正記事以降、その事実を海外向けに発信したかどうかを尋ねると、 「本紙とほぽ同時に、( 同社 )外国語メディアで報じています」 ( 広報部 )と回答があった。

 「自社の外国語メディアで報じるだけでは限界がある。 『糠にクギ』 とは言いたくないが、そのために屈辱をもろに受けているのはわれわれのような米国に住んでいる日本人なのです」 ( 馬場氏 )




 2月18日、馬場氏ら米国在住の日本人3名は東京地裁において朝日新聞を提訴した。 訴状によれば、米国在住の日本人が蒙った被害( 中でもグレンデール市における慰安婦像設置にかかわる公聴会での名誉毀損、地域社会における日本人に対するイジメ、宗教活動における困難など )に伴う精神的苦痛への慰謝料と、 《 慰安婦誤報を引用、転載して誤解を拡大した海外報道機関 》 への 《 真摯な謝罪広告 》 の掲載を朝日新聞に求めている。

 原告の代理人を務める弁護士の徳永信一氏は 「朝日の誤報が国際世論を誤った方向に導いたといえるかどうか」 が裁判の最大の争点になると見込む。 徳永氏が語る。

 「新聞社が世間一般に負う法的責任である真実報道義務に加え、本件ではとくに訂正義務における不法行為責任を朝日に問いたい。 原告は、ロサンゼルス近郊の地域社会で韓国人と日本人の間に深い亀裂を生んだ慰安婦問題について、誤解を解き住民同士の分断を回復するには朝日の謝罪広告が必要だと訴えている」

 ロサンゼルスの日本人街( 通称リトルートーキョー )にある高野山米国別院で海外開教師を務める林竜禅師( 30 )も原告の一人。 訴状によれば、林師の活動拠点であるリトルートーキョー周辺で 《 日本人が韓国系の施設を借りるのに跪いて謝罪すること 》 を要求されたこともあったという。

 林師に布教活動や教育現場での妨害やイジメについて改めて質すと 「寺に来られる方々から( 慰安婦問題が及ぼしている影響については )いろいろ伺っている」 と述べた。

 また、学校での日本人学童に対するイジメについてロサンゼルス日本総領事館の倭島岳彦・広報担当領事は 「これまで在米邦人からイジメに関する件で何度か話を聞いているが、口外しないことを条件に聞いており、公表するわけにはいかない」 という。

 米国各地で 「慰安婦像」 設置反対運動に関わる在留邦人のT氏は、その実態についてこう説明する。 「親などから “反日感情” を植え付けられた韓国系学童が、日本人とみると嫌がらせをしているのは間違いないが、もし学校なり、教育委員会に通報すれば、イジメはますます強まる恐れがある。 それを警戒して米国内ではことを荒立てたくないというのが保護者の心情だ。 その辺のデリケートなところを日本に住む日本人、とくに政府関係者にはわかってもらいたい」




 在米邦人を悩ませるのはイジメだけではない。

 ロサンゼルス周辺で発行されている日本語フリーペーパー 「日刊サン」 は韓国系企業からの広告掲載取り止めに直面した。 同紙は13年6月1CM日付で、慰安婦像問題を議論するグレンデール市議会公聴会に邦人の参加を呼びかける内容のコラムを掲載。 すると、それまで月1回の全面広告を出していた韓国系企業が一方的に契約を解除してきた。 広告料は1回2000ドル。 同紙編集長の富山敏正氏は 「広告収入に頼る小規模経営には堪えた」 と語った。

 コラムの執筆者であるジャーナリストの後藤英彦氏( 元時事通信ロサンゼルス支局長 )は、 「( 日刊サンの )経営に影響しては社員も動揺すると思い、その後コラムでは韓国モノは一切扱っていない。 今のところ自主規制しています」 という。

 3人目の原告、今森貞夫氏( 75 )はアメリカに移り住んで約30年のビジネスマン退役組だ。

 「私は物理的にも金銭的にも 『実害』 はないが、日本人としての誇りと名誉が慰安婦問題で傷つけられた。 その元凶である朝日の誤報を受け売りした韓国メディア、本質をとらえずに女性の権利侵害という点だけで飛びついた似非人権主義の米メディア。 そのために長年異国で火あぶりにされ続けている日本人として、この祖国の新聞を名誉毀損で訴えられないか、日本の司法に問い質したいだけ。 世界の共通語である英語でニューヨークータイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルスータイムズといった主要紙に謝罪広告を出して欲しい。 それでこそ朝日は日本のクオリティ・ペーパーと言える」

 朝日新聞に原告らの主張をどう受け止めるか尋ねると、 「訴状が届いていないため、現時点でコメントすることは差し控えます」 ( 広報部 )と回答があった。 原告らが米社会で味わう苦渋が朝日新聞の誤報と関連するか否かの判断は裁判所次第だが、少なくとも、慰安婦問題が、日本からも韓国からも遠く離れた米国の地域社会に冷たい影を落としている事実だけは見逃してはならない。





( 2015.08.05 )
 

 日本の名誉を守る発信が、足りないのではないか。 府は一層、対外発信の重要性を認識してほしい。 官民を挙げて海外に、事実を適切に伝えていきたい。

 朝日新聞が 「慰安婦狩りに関わった」 とする吉田清治氏の証言などの誤りを認め、関連記事を取り消して1年になる。 だが、 「性奴隷」 などの誤解は広まったままだ。

 朝日新聞は昨年8月5、6日付で 「慰安婦問題を考える」 との検証記事を掲載し、吉田証言のほか、挺身ていしん隊との混同を誤りと認めた。 こうした虚報、誤報が長く正されず、政府も適切な反論を怠ったことで、 「20万人を強制連行」 「日本軍の性奴隷」 などの誤解が広く独り歩きした。

 朝日の誤報訂正をきっかけに、事実を踏まえ是正を求める動きは出始めたが、明らかな誤りさえ、なお正されていない。

 代表例は、慰安婦を 「性奴隷」 とした国連人権委員会のクマラスワミ報告書である。 報告書は吉田証言のほか、依拠する豪州ジャーナリストの著作にも誤りが多いことが分かっている。 根拠とされた元慰安婦らの証言も、事実が確認されたものではない。

 政府は昨年、朝日が吉田証言記事を取り消したことをきっかけに、報告書の一部撤回を求めたが、作成者のクマラスワミ氏は拒否している。

 戦後70年の今年、米国で慰安婦を 「性奴隷」 などとする誤った碑文を刻んだ慰安婦像設置を進める反日団体の動きも続いている。 こうした歴史の歪曲で日本がおとしめられていることは、到底、看過できない。

 当の朝日には、こうした誤解を解くことに責任があるはずだが、積極的でないのは疑問だ。 外部識者による独自の検証では 「事実無根のプロパガンダ( 宣伝 )を内外に拡散させた」 と厳しく指摘されていた。 虚偽報道による国際的影響を小さく見てはならない。

 慰安婦問題で朝日は当初、強制連行の有無を問題にしていたが、強制連行説が崩れた後は 「広義の強制性」 や 「女性の人権問題」 を唱え始めた。 これも自社の第三者委員会に 「論点のすり替え」 と厳しく指摘されたはずである。

 少なくとも、クマラスワミ報告書の 「吉田証言」 に関する記述に対し、朝日として訂正を要求することは当然ではないのか。