年

『環境ルネサンス』 『地球異変』 『もつたいない』 ―― 。
読売、朝日、毎日各紙は長年、紙面で 「環境保護」 を高らかに謳い上げてきた。
―― が、そのウラでは 「水増し部数」 印刷のため、毎年 「東京ドーム」 1000個分の森林が消えているのだ。 これぞまさに綺麗事の極み!
 その新聞各社の“偽善の仮面”を剥がす前に、告発を思い立つたという“現役”の販売店主らの声を紹介しよう。
 まずは、都内で現在も『 毎日新聞販売所』 を経営する所長の話だ。
 「10年前の開所時から、実配900部に対し仕入れは1100部で、 “押し紙” が200部もありました」 収支は、収入が販売代金 と折込チラシ代合計で約450万円。 ここから仕入れ代や固定経費などを差し引くと、毎月、140万円ほどの赤字だった。
 「ただし、毎日本社から補助金として225万円ほど貰っていたので、何とか黒字でした。 それが2年ほど前に突然、補助金は50万円以上減額され、購読契約も減って “押し紙” が500部以上にまで増えた。 担当者に何度も“補助金を増やせないなら何とか押し紙を切ってくれ”と頼みましたが、ダメ。 弁護士に依頼してようやく “押し紙” は切ってもらえたが、補助金がさらに100万円ほど減らされた。 以後も契約は減り続け、また “押し紙” が増える。 赤字が累積したので東京都労働委員会に調停の斡旋を依頼したが、本社は一切応じませんでした」
 結局、今も販売所は続けているが、本社の一方的な仕打ちに怒りを感じ、今年4月に地位保全の仮処分申し立てを東京地裁に行った。 すでに2回の審尋があったが、毎日側は “押し紙” など事実無根と主張するばかりだという。
 「うちは朝日、産経、東京新聞の複合店ですが、実配は朝日が2500部と一番多く、その分 “押し紙” も朝日だけで300部以上あります」
 と明かすのは、都内の複合販売店従業員である。
 「朝日の “押し紙” は、この4年ほどで3倍に増えました。 でも、朝日本社は絶対に切らしてくれない。 仕入れ部数をちょっとでも減らそうとすると、担当者が“減らせない。 もっと増やせ”と言う。 どうせ本社は“強制などしてない”と言うでしょうが、やってること は強制ですよ。 一昨年、東京都ではビール券などの金券を拡販に使うことが禁止になったせいで、契約がガクンと減りました。 おかげで拡販員たちは“金券がダメなら現物だ”と、自転車の荷台に発泡酒を積んで配ってますが、それでも部数は減る一方なんです」
 さらに福岡県広川町で『 YC広川』 を経営する真村久三さん( 59 )の場合、読売に対して地位保全を争った訴訟で06年に1審勝訴し、続けて勝訴した翌年の控訴審では、福岡高裁が “押し紙” を厳しく断罪しているのだ。
 読売は、一方では定数と実配数が異なることを知りながら、あえて定数と実配数を一致させることをせず、定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎にしている
 自らの利益のためには定数と実配数の齟齬をある程度容認するかのような姿勢である
 読売の利益優先の態度
 身勝手のそしりを免れない  ( 高裁判決文より )
 それでも読売は諦めきれず最高裁に上告するも、同年12月、棄却。 ここに “押し紙” の存在は最高裁で“確定”されたのだが、その後、読売は真村さんの店に対して新聞供給を中止するという暴挙に出る。
「明らかに報復だし、他店への見せしめです。 裁判所の地位保全命令にも従わないとは、いったいどういう認識なのか」 ( 真村氏 )
 現在も、読売は供給中止の制裁として裁判所が定めた 「間接強制金」 を1日3万円、真村さんに支払い続けている。 が、要は、兵糧攻めで真村さんが音を上げて“自廃”するのが狙いとしか見えず、あまりにも姑息ではないか。



 読者に届けられないまま闇から闇に葬られている “押し紙” が、折込チラシの広告主に対する重大な背信行為であることは、一度ならず指摘した。
 が、同様に、新聞紙面に掲載される広告の料金についても、部数の水増しは“サギ的行為”である。
 注目すべきは、先に触れた福岡高裁判決の、
 定数だけをABC協会に報告して広告料計算の基礎にしている
 という“認定”だ。
 「そもそも我々が “押し紙” に手を染めるようになったキッカケは、大手広告代理店が、内容や基準ではなくとにかく部数が多い媒体ほど広告価値が高いという基準を作ってしまったこと。 以来、各社とも部数拡大に血道を上げる結果になってしまった」 ( 主要紙経営首脳 )
 では、その広告料金はいったい幾らくらいなのか。
 読売、朝日、毎日の大手 3紙に限っても、例えば死亡や求人広告、あるいはコンサート等のイベント告知 など、種類やスペース、または掲載面などによって、各社ごとに極めて細かく複雑な基準と計算式が設定されている。
 その大まかな目安は各社ともホームページ上に掲示してあるため、それに従って、1面全体を使った場合( 全面 )とその3分の1( 全5段 )の場合を、それぞれモノクロとカラー2種類で試算してみる。
 ちなみに、条件は 「全国版」 「朝刊」 「掲載面は1面や社会面など以外」 といった程度だが、まずは、全面のモノクロだと、

読売……約4,900万円
朝日……約4,100万円
毎日……約2,600万円
 これがカラーでは、

読売……約5,800万円
朝日……約4,900万円
毎日……約3,300万円
 となる。 で、全5段のモノクロだと、

読売……約1,800万円
朝日……約1,500万円
毎日……約960万円
 同様にカラーでは、

読売……約2,600万円
朝日……約2,300万円
毎日……約1,500万円
 といった具合だ。
 もっとも、無論、これらはあくまでも試算上の“定価”であり、 「実際には、広告主との取引年数や出稿の頻度など、新聞社によって様々な条件が加味され、一般に定価よりも低い額になる」 ( 広告代理店関係者 )
 というし、朝日新聞広告局幹部OBによれば、
 「景気悪化のため新聞業界全体で広告収入が減っている。 昨年度の数字でも業界全体で前年比87.5%だし、朝日は4年連続の前期割れで83%でした」
 という実情から、新聞社の側から、出稿してくれるなら大幅にダンピングするというケースもあれば、
 「他紙に比べて朝日の読者は年収、学歴が高いというイメージがあるため、部数では読売よりも少ないのに、媒体価値で互角の勝負をしている」 ( 同 )
 という面もあって、先の定価比較だけで一概には言えないが、広告料金が発行部数に準じているという傾向は見てとれる。
 となると、やはり、高裁判決も指摘する通り、部数の水増しによってこれら広告料金の一部を“サギ的”に不当に得ていると言えるし、であるならば、
 「少なくとも10年以上、広告の“定価”は変わっていない。 やはり本来の実態に合わせた料金表に作り直すべきです」 ( 同 )



 それ以上に見過ごしてならないのは、新聞各社の大いなる欺隔である。
 ご存じのムキも多かろうが、各紙とも以前から、紙面上で 「環境保護」 のキャンペーンを張つてきた。
 読売では『 環境ルネサンス』 と題し、06年4月から 「水危機」 「脱炭素」 「人を守る」 「動物園」 などのシリーズを続け、今年3月まで続いた 「温暖化」 では、C02削減に取り組む人々の活動を伝えていた。
 朝日の場合は『 地球異変』 と題し、同じく温暖化をテーマに昨年1月から幾つかのシリーズをスタート。 今年5月に終了した 「マダガスカル」 では、木の伐採で景観ばかりか生態系まで変化した現地で、もとの林に戻す“復林”活動をしているNGO団体を紹介している。
 そして毎日は、社を挙げて取り組む『 MOTTAINAI( もったいない )』 運動の一環として、地域版ごとに各地の関連イベントの紹介記事を、今も断続的に掲載している。
 それだけではない。 各社のホームページを開くと、それぞれ大層ご立派な環境問題への取り組みを自画自賛している。
 例えば読売。 「社会貢献」 なるページで 「環境方針」 を掲げ、
 環境への負荷を低減するため
 という基本理念に基づき、社内に推進委員会を組織したり環境管理システムを確立したりと、5項目の基本方針を示している。
 同じく朝日でも01年に定めたという 「環境憲章」 に基本理念と方針を掲げているし、取り組みを紹介するページでは、
 地球環境に対する朝日新聞社の関心は高く
  「新聞はリサイクルの優等生」 といわれ
 と自慢し、 「環境報告書」 の中でも、
 普段から紙を大事に使うことを全社の環境行動計画の重点項目にして
 と謳い上げている。
 さらに毎日など、京都議定書を待ち出して日本の取り組み不足を指摘してみせ、
 これまでに自前の取り組みで14万本、後援植樹も含めると38万本を植えています
 と、林野庁が主導する植林方式よりいかに自社の実績が素晴らしいかを大喧伝しているのだ。
 こうしたキャンペーン、自画自賛がいかに綺麗事に過ぎず、欺哺に満ちたものであるか。 読者や広告主を欺く “押し紙” こそが、それを如実に証明する。
 言うまでもなく、新聞の紙はパルプ材、すなわち木を原料にしている。 ただし、近年は新聞などの古紙を原料としてリサイクルする割合が高まっているのは事実。 実際、『( 財 )古紙再生促進センター』の統計によれば、82年は古紙の割合が約47%だったのが、07年には約87%にまで増えている。
 しかし、古紙以外の原料は紛れもなく“樹木”なのだ。 では、 “押し紙” としてムダに棄てられている水増し分が、いかに森林伐採という“環境破壊”の罪を犯しているか示そう。
 かねてよりこの問題に警鐘を鳴らしてきた、毎日新聞元常務で慶応大非常勤講師河内孝氏の試算はこうだ。



 まず、NGO『 熱帯林行動ネットワーク 』によれば、日本の紙全体のために消費されたパルプ材( 古紙以外の原料 )の量は、03年で1874万トン。 このうち、 「製材残材」 ( 建設などに使用された材木の残り )などを除いた、まさに切り倒された樹木の量は1405万トン。 体積にして約2600万立方メートルとなり、これは杉の平均的直径、高さ、体積から換算すれば、約1億1000万本分に当たる。 さらに経産省の 「生産動態統計」 によれば、紙生産量のうち新聞用紙の占める割合は約20%だから、約2200万本。 そして “押し紙” の割合を低く見積もって1割とすれば、約220万本となる。
 さらに、これまで明らかにしてきた実態から “押し紙” を3割と見れば、660万本にものぼるのだ。
 この660万本を、新聞用紙の原料である針葉樹の森林面積に換算すると、 「1ヘクタールに約1500本」 ( 森林組合連合会 ) つまり、実に1年間で東京ドーム約1000個分の森林が伐採される量に該当するのである。
 無論、古紙原料の含有量など条件設定によって導き出される数量は違うだろう。 ―― が、
  「製紙会社は、木材の残りカス( 残材 )を使っているから森林を傷めていないと主張します。 しかし、我々の現地調査では、直立でなかったり材木用に向かない原木を切り倒し、パルプ原料に使われていることを確認しています」 ( NGOの担当委員 )
 すなわち、正確な量の多寡はともかく、新聞各社が表面では 「環境保護」 を謳い、裏では長年その破壊を続けている事実は紛れもなく存在するのだ。
  「昨年、大学の私の教え子が大手新聞に入社しましたが、面接で資源のムダ遣いについて議論した際、会社の面接官は“君は記者になりたいのか経営者になりたいのかハッキリしなさい”“新聞記者は普通、そういう問題は頭に置かないものだ”と言ったそうです。 これが新聞社の環境問題に対する認識を象徴してますよ」 ( 河内氏 )
 相も変わらず、各社は、
  「読売新聞の環境報道を貶める記事に対しては断固抗議します」 ( 読売新聞東京本社広報部 )
  「繰り返しお答えしていますが、弊社には貴誌が取り上げているようないわゆる “押し紙” はありません」 ( 朝日新聞広報部 )
  「弊社と取引のある製紙会社の新聞用紙は、古紙配合率60~100%と環境に配慮した製造方法をとっており、木材は計画的に植林・伐採されたものを使っています」 ( 毎日新聞社長室広報担当 )
 としか答えない。
 この厚顔ぶりは、もはや“犯罪的”としか言いようがないほどだ。 改めて言おう。
 “押し紙”は確実に存在する。
 自らそのタブーに斬り込めない新聞社が“社会の木鐸”たることなど、到底、不可能に違いないのだ。